科学技術開発大国への息吹にふれて

柴田　洋二

北京に初めて行ってみた感想は、とにかく「広くて、大きい」こと、都市改造計画真最中で新しい中国の面目躍如であること、などでした。

ところで、今回、視察できた範囲の研究開発の現場で見る限りでは、中国のエネルギー政策の最優先課題は石炭のグリーン化であり、原子力はその次という印象。石炭ガス化関係の研究を行っているところでは、若い、使命感に燃えた優秀な研究者が多く、我々への説明も、熱のこもったものでした。研究者の居室もきれいで、環境も良く、一部の実験施設の入口には「国家重点実験室」の表示が誇らしげに掲げられていました。それと対比すると、原子力関係は、確かに次々と新しい試験設備の建設が進められておりますが、計画遅延に悩まされているのが実情。

　今回、視察した先々で中国の研究者とのミーテングが行われましたが、出席した研究者は中国のエリートだけあって、殆どの人が流暢な英語を話し、日本に留学経験のある人は日本語も上手でした。若い人が海外に留学し、必死に技術を学び、留学先でも研究の中枢に残る努力をしている姿は、日本が失いつつある「真摯な情熱」に通じるものがあり、感激しました。中国は、いずれ、経済だけでなく、科学技術の分野でも世界の指導大国になるであろう、という思いを強くした視察でもありました。

　貴重な経験を得る機会を作って頂いた日中科学技術交流協会の方々、中国側で受入れて頂いた関係者の方々に御礼申し上げたい。